はじめに
自動車金型分野では、耐摩耗性と高精度を両立する部品が求められます。粉末ハイスHAP40は靱性と耐摩耗性に優れ、精密金型部品に適した材料です。本事例では、HAP40の難削特性に対し、切削条件と工程設計を最適化して高精度に仕上げた取り組みを紹介します。
1. 製品概要
| 材質 | 粉末ハイス HAP40 |
|---|---|
| 加工方法 | マシニング(仕上げ切削) |
| 公差 | ±0.01mm |
| 最小加工R | R1(φ1.5工具) |
| 用途 | 自動車金型部品(精密金型構成部品) |
焼入れ後も高硬度を維持するHAP40に対し、工具負荷を抑えるパス設計と各工程の役割分担により、量産段階での再現性と寸法安定を確保しました。
2. 加工のポイント
2-1. 高硬度材HAP40への対応
HAP40は一般的な工具では摩耗・欠けが発生しやすい難削材です。切削抵抗を低減するために、切込み・送り・回転のバランスを最適化し、工具への負荷を分散。安定した工具寿命と寸法精度を両立しました。
2-2. 最小R1の微細加工
一部コーナーでR1(φ1.5)が要求されるため、折損リスクを見込んだ多段加工を採用。プログラム上で負荷を分割し、送り量と切込みを段階制御することで、形状精度と工具安定性を確保しています。
2-3. 工程分割による精度安定
工程を荒取り → 中仕上げ → 仕上げに分け、熱の持ち越しと刃先摩耗による寸法変動を抑制。各段階で必要な精度を段階的に積み上げることで、最終工程の精度確度を高めました。
3. 課題と対策
- 工具摩耗:低送り・高回転条件の最適化と交換サイクル標準化で安定化。
- 微小径工具の折損:切込み分割とZ方向負荷軽減パスで折損リスクを低減。
- 熱変形:負荷分散と工程分割により発熱を局所化し、寸法誤差を抑制。
4. 加工成果
- 寸法公差 ±0.01mm を安定達成
- R1(φ1.5) の微細形状を高精度加工
- HAP40の耐摩耗性を活かした高耐久金型部品を製作
- 工程分割により再現性・量産安定性を確保
5. 仕様一覧
| 材質 | 粉末ハイス鋼(HAP40) |
|---|---|
| 加工方法 | 高精度マシニング(仕上げ切削) |
| 公差 | ±0.01mm |
| 最小R | R1(φ1.5) |
| 用途 | 自動車金型部品 |
| 特徴 | 高硬度材の精密切削/寸法安定性重視/工程最適化 |
6. FAQ(よくある質問)
- Q1. HAP40のような高硬度材でもマシニング加工は可能ですか?
- はい。加工条件と工具選定を最適化することで、焼入れ後のHAP40でも高精度切削が可能です。
- Q2. HAP40とSKD11では加工性に違いがありますか?
- HAP40は粉末ハイスのため耐摩耗性が高く、切削抵抗は大きい傾向にありますが、その分、仕上げ精度と長寿命性に優れます。
- Q3. R0.5のような極小R加工も可能ですか?
- R1程度までが安定範囲です。R0.5以下は形状や深さにより難易度が高く、都度ご相談ください。
- Q4. 寸法精度±0.01mmはどのように確認していますか?
- 加工後に三次元測定機で全寸法を測定し、精度確認を実施しています。
- Q5. 磨き(手仕上げ)は行っていますか?
- はい。最終工程で磨き加工を行い、製品の精度と外観品質を安定化させています。
- Q6. HAP40以外の粉末ハイス材にも対応していますか?
- HAP10やHAP72など、他の粉末ハイス材でも特性に合わせた加工条件で対応可能です。
- Q7. 加工後の熱処理や表面処理は対応できますか?
- 焼入れ・コーティング・窒化処理など、一貫して対応可能です。
- Q8. 試作や小ロット部品にも対応していますか?
- 1個からの試作加工にも対応しています。形状確認・精度検証など柔軟に対応いたします。
- Q9. 図面がなくても加工できますか?
- ご相談ください。図面がない場合でも、3Dモデルや現物を基に対応方法をご提案いたします。
- Q10. 海外金型との互換部品も製作可能ですか?
- 図面・データをご支給いただければ、精度保証付きで製作対応可能です。
7. まとめ
本事例は、粉末ハイスHAP40を用いた自動車金型の精密マシニング加工です。高硬度材に対し、加工条件と工程設計を最適化することで、±0.01mmの高精度とR1の微細形状を実現しました。難削材であっても、適切な工程分割とツールパス設計により、再現性と量産安定性を両立できます。
8. お問い合わせ
図面段階のご相談から試作・量産まで対応します。
「HAP40」「粉末ハイス」「自動車金型」「±0.01」「R1」などの加工案件は、お気軽にお問い合わせください。