1. 製品概要
| 製品名 | JMホルダー(ノートPC用 電気・電子機器部品) |
|---|---|
| 材質/板厚 | SECC / 0.6mm |
| 公差 | 0.05〜0.25mm(形状・穴位置・平面度) |
| 形状特長 | 軽量化のため平面部に多数の抜き開口(多抜き構造) |
| 用途 | 基板・ユニットの支持/筐体内固定ブラケット |
JMホルダーは、組立時の“座り”と基準位置の再現性が求められるため、平面度の安定化が重要テーマです。抜き開口が多い薄板構造は剛性が下がりやすく、打抜き・搬送・押さえの各工程で発生する応力の偏りが、反り・波打ちの原因となります。
2. 加工課題
- 多抜きによる局所剛性低下:荷重経路が分断され、座屈・波打ちが生じやすい。
- 残留応力の偏在:抜き順・押さえ配分・搬送で応力が偏り、戻り変形の起点に。
- 微小公差の両立:穴位置・エッジ品質・板厚偏差が平面度と相互干渉。
3. 解決策
3-1. 抜き配置とキャリア設計
開口の位置・順序・対称性を再設計し、板面全体の荷重バランスを均等化。搬送キャリアはねじれ剛性を確保し、最終工程直前に最短キャリア化することで拘束起因の反り残りを回避しました。
3-2. 金型内多点位置決め
序盤で基準穴・基準面を形成。各ステージでパイロットピン+位置決めブロックにより、X方向の平行移動・回転・浮き(Z)を同時拘束し、工程間の累積誤差を遮断します。
3-3. 押さえ力分布の最適化
ストリッパ押さえ力分布を解析と実測で合わせ込み、荷重集中を緩和。局所座屈・波打ちを抑制し、平面度の再現性を高めました。
3-4. クリアランス&刃先品質
形状ごとにクリアランスを最適化し、パンチ刃先の平行度・面粗さを統一。せん断面の均質化により加工残留応力差を低減し、反りの起点を作らない設計としました。
3-5. SECC特性に基づく表面・潤滑管理
SECCのメッキ被膜ダメージを避けるため、接触部の面圧・潤滑条件・表面粗さを統合管理。擦過傷を抑え、外観と導通性(接地信頼性)を両立しています。
4. 成果
- 公差0.05〜0.25mmを量産で安定達成。
- 多抜き構造でも平面度の再現性を確保し、組立時の座り・位置決め性が向上。
- 外観と機能性の両立:被膜損傷と導通不良リスクを低減。
- 立上げ効率化:調整ポイントの標準化により段取り時間・保全工数を削減。
FAQ(よくある質問)
- Q1. なぜ抜きが多いと平面度が悪化しやすいのですか?
- 開口で板の荷重経路が途切れ、局所的に剛性が低下します。抜き荷重や搬送応力が偏ると残留応力が不均一になり、反り・波打ちにつながります。
- Q2. どのように平面度を“作る”のですか?
- 抜き配置の対称化・キャリア剛性・多点位置決め・押さえ力分布・クリアランス最適化を組み合わせ、工程設計そのもので平面度を確保します(本事例では工程内の「ひずみ取り工程」は採用していません)。
- Q3. 公差0.05~0.25mmを安定させる要点は?
- 金型内での基準再現(多点位置決め)と荷重分散(押さえ力・レイアウト)、そして刃先品質の均質化です。これらにより累積誤差の拡大を抑えます。
- Q4. SECCならではの注意点は?
- めっき被膜の損傷が白サビや導通不良につながるため、接触面の面圧・潤滑・粗さを管理します。梱包・保管も品質に影響します。
- Q5. 設計段階でのDFM提案は可能ですか?
- 可能です。開口位置・リブ配置・基準穴設計・キャリア切り離し位置など、見込み歪みを減らす設計を初期段階からご提案します。
まとめ
JMホルダー(SECC t0.6)は、軽量化による多抜き×薄板という不利条件下でも、設計・金型・工程の最適化により平面度・寸法精度・外観品質を量産レベルで維持できました。ノートPCをはじめとする電機分野の高密度・軽量部品に対し、DFMから量産まで一貫支援します。
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