はじめに:事例の背景
照明用シェードは外観品であると同時に、光学性能にも直結するため、反射効率と寸法精度の両立が不可欠です。本事例では高輝アルミ(フィルム付)t0.6を採用。先端のとんがり形状は応力が集中し亀裂が懸念されるため、順送型の工程分割(段階曲げ)とプリフォームで負荷を分散し、合わせ面の透き間は0.1mm以下に制御して光漏れを抑制しました。
1. 製品概要
| 製品名 | 照明用シェード(順送プレス) |
|---|---|
| 材質 | 高輝アルミ(表面フィルム付) |
| 板厚 | 0.6mm |
| 形状特徴 | 先端がとんがり形状/各面の合わせ面 |
| 要求精度 | 合わせ面の透き間 ≤ 0.1mm(光漏れ防止) |
| 成形方式 | 順送プレス(段階曲げ+プリフォーム) |
高輝アルミは美観に優れる一方で、傷が目立ちやすく表面保護が必須です。フィルムを活かしたまま工程を通し、最終で剥離する設計により、外観グレードを確保しつつ寸法の再現性を高めています。
2. 加工課題
- 先端部の亀裂:とんがり形状に応力集中しやすい。
- 光漏れ対策:合わせ面の透き間を0.1mm以下に保つ必要。
- 外観品質:高輝材で傷・打痕が顕在化しやすく、搬送・押さえがシビア。
3. 解決策
3-1. 先端亀裂の根本対策
段階曲げで曲げ量を各ステージに配分し、初期工程でプリフォーム(予備曲げ)を実施。さらに、先端部のコーナーR最適化と局所的なノッチ量の微調整で応力集中を緩和し、亀裂の起点を抑えました。戻り量を見込んだ金型スプリングバック補正で、最終角度の安定化も図っています。
3-2. 透き間0.1mm以下の実現
合わせ面は直線度・平行度を基準に管理。金型内での多点位置決めにより工程間の累積誤差を遮断し、仕上げステージでの追い込み成形で透き間を0.1mm以下へ。
3-3. フィルム保護と外観品質
搬送接触面の粗さ管理と押さえ圧分布の最適化で擦過を抑制。フィルムは原則最終工程で剥離し、必要部のみ部分剥離に対応。打痕・擦り傷を低減し、高輝外観を維持しました。
4. 成果
- 亀裂抑制:とんがり先端の亀裂を段階曲げ+プリフォームで抑制。
- 光漏れ防止:合わせ面の透き間を0.1mm以下で量産安定。
- 外観グレード維持:フィルム保護と押さえ圧最適化で擦過傷を低減。
- 再現性向上:多点位置決め・仕上げ追い込みで寸法ばらつきを抑制。
仕様一覧
| 材質 | 高輝アルミ(表面フィルム付) |
|---|---|
| 板厚 | 0.6mm |
| 要求精度 | 合わせ面の透き間 ≤ 0.1mm(光漏れ防止) |
| 成形方式 | 順送プレス(段階曲げ+プリフォーム) |
| 品質保証 | 圧着想定の治具検査/外観検査(擦過・打痕) |
FAQ(よくある質問)
- Q1. 先端部のRはどのように決めますか?
- 割れ限界を踏まえた最小Rを基準に、段階曲げと戻り量を見込んで最終Rを設定します。試作段階で割れ発生点を確認し、Rとノッチ量を調整します。
- Q2. 透き間0.1mm以下は量産で維持できますか?
- はい。金型内多点位置決めと仕上げ追い込み、圧着治具での抜き取り検査を組み合わせ、量産再現性を担保します。
- Q3. フィルム剥離後の外観は大丈夫ですか?
- 最終工程で剥離する運用により、成形中の擦過を最小化。搬送接触部の面粗さ・押さえ圧を制御し、剥離後の外観グレードを確保します。
- Q4. 反射特性の要件がある場合の対応は?
- 材質ロットの反射率・粗さを事前確認し、曲げ条件での艶変化を評価。必要に応じて反射面側の接触を避ける工程配置に変更します。
まとめ
高輝アルミ(フィルム付)t0.6シェードに対し、先端亀裂の根本対策と透き間0.1mm以下の管理を、順送プレスの工程分割と金型の最適化で両立しました。外観品質と寸法精度を同時に満たすことで、光学性能と意匠性の要求に応える量産体制を確立しています。
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