はじめに
本事例は、SPFH590(t2.0)のBRKT TILTにおける順送プレス金型の量産実装例です。ハイテン材は一般材に比べ戻り量が大きく、さらに横長形状では反り・ひずみが顕著に現れます。当社は金型剛性・工程順序・補正設計を統合的に最適化し、量産下での形状再現性を高い水準で確保しました。
1. 製品概要
| 製品名 | BRKT TILT(自動車用ブラケット) |
|---|---|
| 材質 | SPFH590(高張力鋼板) |
| 板厚 | t = 2.0mm |
| 形状 | 横長・高剛性構造 |
| 方式 | 順送プレス(段階成形) |
| 焦点 | スプリングバック/反り/ひずみの抑制 |
2. 加工課題
- 厚板×ハイテン材:t2.0のSPFH590は戻りが大きく角度・位置精度が不安定。
- 横長形状:打抜き・曲げ時の応力偏在で反り・ねじれが生じやすい。
- 金型変位:高荷重で工具・ダイセットのたわみが寸法誤差の原因に。
3. 解決策
3-1. 金型剛性の最適化
ダイセット・ホルダーの剛性を強化し、支持リブ・締結レイアウトを最適化。高荷重下でも変位を抑え、曲げ角度と基準位置の再現性を高めました。
3-2. 反り・ひずみ対策
順送ステージの荷重配分を見直し、保持位置・押さえ量・受け面の支持バランスを再設計。最終段で微小な平面度補正を行い、横長部品の反りを実用レベルまで抑制しました。
3-3. 寸法精度の安定化
実測データを基に戻り量を見込んだ角度補正を各工程へ反映。荷重・スライド速度・潤滑条件をチューニングし、寸法精度(角度・位置)を量産で安定維持しました。
4. 成果
- 寸法精度(角度・位置)を安定維持
- 横長形状に起因する反り・ひずみを抑制
- 厚板ハイテン材での安定量産体制を確立
5. FAQ(よくある質問)
- Q1. SPFH590の加工で最も難しい点は?
- 戻り量が大きく角度・位置の寸法安定が難しい点です。厚板では金型剛性と補正設計の精度が鍵になります。
- Q2. 横長形状の反り・ひずみはどう制御しますか?
- 各ステージの荷重配分と支持バランスを最適化し、最終段で平面度補正を行って抑制しています。
- Q3. 量産で寸法精度を保つ仕組みは?
- 角度補正値の標準化、ダイセット剛性の確保、条件チューニングと測定フィードバックのサイクルで維持します。
- Q4. SPFH590以外のハイテン材にも対応可能ですか?
- はい。さまざまな高張力鋼板にも対応可能です。
- Q5. 試作から量産立上げまで依頼できますか?
- 可能です。成形性検討・金型設計・試作評価・量産条件の標準化まで一貫対応します。
6. まとめ
SPFH590(t2.0)のBRKT TILT順送プレスでは、スプリングバックと横長形状特有の反り・ひずみを、金型剛性設計・工程配分・角度補正で抑制。結果として寸法精度(角度・位置)を安定維持し、厚板ハイテン材でも高い再現性と量産性を両立しました。
7. お問い合わせ
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