ハイテン材780MPa級の順送プレス加工事例|JAC780Yの角度・位置精度を安定化
加工詳細
- 製品名
- ハイテン材によるPATCH
- 材質
- JAC780Y45/45
- 業界
- 自動車
加工内容・特徴
スプリングバックに起因する角度・位置精度のばらつきを抑え、量産安定を実現した加工事例です。
はじめに
対象製品は自動車補強用途のPATCH部品で、材質には JAC780Y45/45(t0.8) を使用しています。
高張力鋼板特有の戻り量の大きさにより、曲げ角度の再現性確保が難しく、
金型設計・剛性・成形条件を含めた総合的な対策が求められました。
なお、ハイテン材そのものの成形特性や、注意点の全体像については
ハイテン材の技術コラム
で整理しています(材料選定や戻りの考え方を含め、俯瞰して確認できます)。
1. 製品概要
| 製品 | PATCH(自動車補強部品) |
|---|---|
| 材質 | JAC780Y45/45(780MPa級 高張力鋼板) |
| 板厚 | t = 0.8mm |
| 加工方式 | 順送プレス(曲げ主体) |
| 重点管理 | 曲げ角度・位置精度 |
JAC780Yは軽量化と剛性確保に応える素材ですが、成形後の戻り(スプリングバック)が大きく、
角度・位置の寸法安定が難しくなります。
2. 加工課題
- スプリングバックの大きさ: 曲げ角度が狙い値から外れやすく、ばらつきが発生。
- 高荷重による金型変位: パンチ・ダイへの負荷が増大し、形状再現性に影響。
- 順送工程での誤差累積: わずかなズレが後工程へ波及し、位置精度が不安定に。
ハイテン材の戻り挙動は、曲げ条件や拘束条件の影響を受けやすく、量産での安定化には
“戻りを前提とした設計と工程づくり”が重要になります。
考え方の全体像は
スプリングバックの技術コラム
にまとめています。
3. 解決策
3-1. 角度補正を前提とした金型設計
初期トライ段階で実測した戻り量をもとに、事前補正角度を組み込んだ曲げ設計を採用しました。
曲げR・アタック角・拘束条件を細かく調整し、量産時に狙い角度へ収束する設計としています。
3-2. 金型剛性の強化と反力分散
高張力材による反力に対応するため、ダイセット・パンチホルダー・ストリッパ支持構造の
剛性バランスを見直しました。局所的な変位を抑え、反力を分散させることで、
曲げ角度と位置精度の再現性を高めています。
3-3. 成形条件の最適化
材料特性に合わせて、荷重条件・スライド速度・潤滑条件を最適化。
曲げ部の材料流動を安定させ、角度ばらつき・面粗さの変動を抑制しました。
4. 成果
- 曲げ角度・位置精度の安定化
- 量産時の寸法ばらつき抑制
- 工程条件の標準化による立上げ時間短縮
- 金型の安定稼働と保全性向上
5. FAQ(よくある質問)
Q1. JAC780Yとはどのような材料ですか?
780MPa級の高張力鋼板で、軽量化と剛性を両立できる一方、スプリングバックが大きく、
成形難度の高い材料です。
Q2. ハイテン材のスプリングバック対策の要点は?
戻り量の定量化、事前補正設計、金型剛性確保、成形条件の安定化を組み合わせることが重要です。
詳細な考え方は
スプリングバックの技術コラム
でも解説しています。
Q3. 量産で安定させるためのポイントは?
補正値を前提とした設計と、金型変位を抑える構造、条件の標準化が鍵となります。
6. まとめ
780MPa級ハイテン材(JAC780Y45/45・t0.8)の順送プレス加工において、
スプリングバックを前提とした角度補正設計と金型剛性の最適化、成形条件の調整を組み合わせることで、
曲げ角度・位置精度の安定した量産を実現しました。
ハイテン材特有の成形課題に対し、設計・金型・条件を一体で作り込むことが重要であることを示す事例です。
併せて、
ハイテン材の技術コラム
および
スプリングバックの技術コラム
も参考にしていただくと、検討ポイントを整理しやすくなります。
7. お問い合わせ
「ハイテン材」「780MPa級高張力鋼板」「順送プレス」「スプリングバック対策」に関するご相談は、
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