複数方向のカーリング形状を順送型の複数工程で段階的に成形し、割れ・戻り・しわ・公差累積を抑制しつつ、工程削減と品質の一貫性を両立しました。
1. はじめに:事例の背景
カーリング形状は、自動車部品の端部強度・安全性・剛性向上に効果的です。
本事例では、従来複数構成だった部品をSPCC材によって一体化し、さらに同構造をハイテン材でも量産可能とすることで、部品点数削減・工程削減・品質安定性向上を実現しました。
ハイテン材のカーリング成形は割れ・戻り・しわなどの課題があるため、順送型の工程分割やカム制御による負荷分散が不可欠です。本記事では、SPCC材を中心に、ハイテン材への展開も含めた加工技術をご紹介します。
2. 製品概要
| 製品名 | カーリング形状を有する一体化部品(SPCC/ハイテン材) |
| 材質 | SPCC(主材)/ハイテン材(対応可) |
| 板厚 | 1.0〜1.6mm |
| 特徴 | 複数方向カーリング形状、工程集約、一体化構造 |
| 成形方式 | 順送プレス(段階成形+カム制御) |
SPCC版とハイテン版の2種類を製作しており、材質に応じて曲げ量配分・クリアランス・潤滑条件を最適化しています。
3. 加工上の課題
- ハイテン材特有の割れ・戻り:高強度鋼は成形負荷が高く工程最適化が必須。
- 複合カーリングの干渉:曲げ順序やカムストローク制御が重要。
- 公差累積:一体化に伴い基準面の統一と精密位置決めが不可欠。
- 金型摩耗:高面圧によりパンチ・ダイの摩耗が進行しやすい。
4. 一体化の狙い
- 部品点数削減による組立工数の低減
- 溶接・かしめ工程の削減
- 基準面統一による公差累積の抑制
- 剛性・品質の安定化
- SPCC → ハイテン材への技術転用による加工幅拡大
5. 解決策
5-1. 段階的カーリング成形
曲げ量を工程ごとに分配し、割れとしわを防止。
SPCCとハイテン材では戻り量が異なるため、材質別に角度配分を最適化。
- 曲げ半径を段階的に追い込む
- 材質ごとの戻り量を反映した角度調整
- クリアランス・潤滑条件の材質別最適化
5-2. 自社製カムと工程設計
複数方向のカーリングを実現するため、自社製カムユニットを適切に配置し、
干渉防止と仕上がり精度の両立を図っています。
5-3. 金型耐久・品質管理
- 摩耗に強い金型材を採用
- 面圧分布を均一化したクリアランス設計
- 工程内測定でロット内の安定性を監視
- 材質別の金型保全基準を設定
6. 成果
- 一体化による部品点数削減
- 溶接点削減による工程短縮
- 基準統一で公差累積を抑制
- SPCC版 → ハイテン材版へ技術転用が可能
- 順送化でリードタイム短縮・歩留まり改善
7. 仕様一覧
| 材質展開 | SPCC(主材)/ハイテン材(対応可能) |
| 板厚 | 1.0~1.6mm |
| 成形方式 | 順送プレス(段階曲げ+カムユニット) |
| 金型特徴 | 自社製カム、基準面一元化、面圧最適化 |
| 品質管理 | 治具測定・工程内計測・材質別補正 |
8. FAQ(よくある質問)
Q1. SPCCとハイテン材で工程は変わりますか?
戻り量・負荷・摩耗特性が異なるため、曲げ配分とクリアランスを別設計します。
Q2. 一体化のメリットは?
接合工程削減・部品精度向上・工程短縮・コスト最適化などがあります。
Q3. ハイテン材の割れ対策は?
段階曲げ・カムタイミング最適化・潤滑制御が重要です。
9. まとめ
SPCC一体化部品のカーリング順送成形を基盤とし、
同一の技術をハイテン材にも展開できる点が本事例の特徴です。
部品点数削減・公差安定・コスト改善を両立し、
高強度材での成形にも対応できる加工技術となっています。
10. お問い合わせ
図面段階からの加工性検討、SPCC/ハイテン材での量産対応までサポートします。
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