銅クラッド材0.34mmを用いたオイルクーラー用順送プレス部品の事例です。
外径フランジ高さ1.5mm、内側22.5°の傾斜形状を、切り離し後に自社製スライドフィンガー(エアシリンダー駆動)で安定搬送し、
薄肉材の反り・歪み・傷を抑えながら高精度に成形しています。
はじめに:事例の背景
自動車のエンジン性能と信頼性を支えるオイルクーラーは、放熱性と寸法精度の両立が求められる部品です。
本事例では、銅クラッド材0.34mmに対し、外径フランジ高さ1.5mmと内側22.5°傾斜を持つ形状を順送プレスで量産化した実績をご紹介します。
切り離し後の薄肉ワークは姿勢が不安定になりやすく、搬送中の傷や反りが問題になりがちです。
当社では自社製スライドフィンガー(エアシリンダー駆動)を採用し、切り離し後の搬送を安定させることで、
後続成形の精度と歩留まりを向上させました。
1. 製品概要
| 製品名 | オイルクーラー用順送プレス部品 |
|---|---|
| 材質 | 銅クラッド材 |
| 板厚 | 0.34mm(薄肉) |
| 形状特徴 | 外径フランジ高さ1.5mm/内側22.5°傾斜形状 |
| 搬送方式 | 切り離し後:自社製スライドフィンガー(エアシリンダー駆動)による製品搬送 |
| 成形方式 | 順送プレス(段階成形) |
銅クラッド材は熱伝導性・耐食性に優れ、オイルクーラー用途に適した材料です。
一方で、薄肉で柔らかく傷が付きやすいため、切り離し後の姿勢変化や搬送時の擦過傷・反りが懸念されます。
本事例では、搬送保持を強化しつつ各ステージの負荷を分散する工程設計を採用しています。
2. 加工課題
- 薄肉銅クラッド材の安定成形:柔らかく傷がつきやすく、反り・歪みが出やすい。
- 特殊形状の両立:外径フランジ高さ1.5mmと内側22.5°傾斜を量産レベルで安定確保する必要がある。
- 切り離し後搬送:自由化したワークの位置ずれ・姿勢変化を抑え、後工程の精度を維持すること。
3. 解決策
3-1. 自社製スライドフィンガーによる安定搬送
外径切り離し工程の後、ワークを自社製スライドフィンガーで確実に把持し、
エアシリンダー駆動でタイミング良く送出する構成としました。
これにより、位置決め精度を維持したまま後続成形へ受け渡すことができ、
搬送起因の傷・姿勢変化を抑制しています。
薄肉銅クラッド材のような変形しやすい材料では、搬送方式が歩留まりに大きく影響します。
スライドフィンガーの掴み位置・押さえ力・ストロークを最適化することで、
搬送不良に起因する不良低減と安定した生産性向上を実現しました。
3-2. 順送工程の最適化(段階成形)
フランジ高さ1.5mmと内側22.5°傾斜は、一度に成形すると材料流動と戻りが大きくなり、
反りや割れのリスクが高まります。そのため、複数ステージに分割した段階成形を採用しました。
材料流動とばね戻りを見込んだ曲げ量の配分、潤滑条件の最適化、送りピッチ・クリアランスのチューニングにより、
反り・割れ・バリを低減。工程ごとの負荷を均一化することで、寸法再現性の高い順送工程を構築しています。
3-3. 金型設計と耐久性の両立
銅クラッド材の摩耗特性を踏まえ、パンチ/ダイの刃先形状と面圧を最適化しました。
クリアランス設計や表面処理の選定により、バリを抑えつつ金型寿命を確保しています。
さらに、定期保全の標準化と寸法モニタリングを組み合わせることで、
再研磨タイミングを適正化し、寸法再現性と金型寿命の両立を図っています。
4. 成果
- 高精度形状の安定量産:外径フランジ高さ1.5mm・内側22.5°傾斜を安定して量産レベルで確保。
- 歩留まり向上:切り離し後の搬送を安定化し、搬送起因不良を低減。
- コスト最適化:工程安定と金型寿命の延伸により、保全・材料ロスを削減。
- 信頼性向上:寸法ばらつきの抑制により、組立精度および製品信頼性が向上。
仕様一覧
| 材質 | 銅クラッド材 |
|---|---|
| 板厚 | 0.34mm |
| 成形方式 | 順送プレス(段階成形) |
| 形状特徴 | 外径フランジ高さ1.5mm/内側22.5°傾斜 |
| 搬送方式 | 切り離し後:自社製スライドフィンガー(エアシリンダー駆動) |
| 品質管理 | 搬送起因不良の監視、ロット内寸法ばらつき管理 |
FAQ(よくある質問)
Q1. スライドフィンガーは一般的な搬送方式とどう違いますか?
切り離し後の自由化ワークを把持して同期搬送できるため、姿勢変化や傷の発生を抑えられます。
特に薄肉の銅クラッド材では、搬送方式による品質差が大きく、スライドフィンガーが有効です。
Q2. 22.5°の傾斜角は工程分割が必要ですか?
はい。角度とフランジ高さを同時に与えると負荷集中と戻りが増えるため、
段階成形で角度を配分することを推奨しています。試作段階で材料流動を確認し、最適な工程割りを決定します。
Q3. 金型寿命はどのように管理していますか?
クリアランス設計・刃先形状・表面処理に加え、保全サイクルの標準化と寸法モニタリングで摩耗を管理しています。
これにより、再研磨タイミングをコントロールし、再現性を維持しながら寿命を延ばしています。
Q4. 他材への転用は可能ですか?
可能です。材質ごとの復元力・流動特性に合わせて、工程分割・潤滑・クリアランスを再設計することで、
アルミやステンレスなど他材への展開にも対応できます。
まとめ
銅クラッド材0.34mmに対するオイルクーラー用順送プレスでは、
外径フランジ高さ1.5mm/内側22.5°傾斜の特殊形状を量産レベルで安定確保しました。
自社製スライドフィンガー(エアシリンダー駆動)による切り離し後搬送の安定化と、
段階成形を軸とした工程設計・金型耐久の最適化により、
反り・傷・寸法ばらつきを抑制し、品質とコストの両立を実現しています。
お問い合わせ
図面段階からの加工性検討、試作〜量産まで一貫対応いたします。
「オイルクーラー」「順送プレス」「銅クラッド材」に関するご相談は、
お問い合わせフォームまたはお電話にてお気軽にご連絡ください。