超硬の金型部品作りで最初に気をつけなければいけない点は「欠けさせないこと」です。超硬合金はダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ反面、脆いという欠点を併せ持ちます。刃先が欠けてしまえば、どれだけ精度の高い機械を使っても寸法は出ません。
この記事では、超硬の金型部品を精密加工するうえで要になる研削の条件設定——砥石回転数・送り速度・切り込み量の考え方と、ダイヤモンド砥石の使い分けを解説します。あわせて、超硬部品で実際に保証している寸法精度もお伝えします。

超硬合金はなぜ欠けやすいのか
超硬合金は、タングステンカーバイド(WC)などの炭化物をコバルト(Co)といったバインダー金属で焼き固めた材料です。硬さはロックウェルAスケールでHRA80〜94の範囲にあり、金属材料の中では最上位に位置します。金型のパンチやダイに使えば、摩耗による寸法変化を大幅に抑えられます。
ただしこの硬さは、そのまま脆さと引き換えになっています。素材メーカーの解説でも「硬度が非常に大きく、同時に脆いという欠点を持つ」と明記されているとおり、超硬は粘り強さを持ちません。鋼であれば変形して逃げる場面でも、超硬は変形せずに割れます。
この性質は加工工程にそのまま影響します。鋼のパンチであれば多少強引な条件で削っても形にはなりますが、超硬では加工中の一瞬の無理がそのまま欠けとして現れます。超硬部品の加工技術とは、突き詰めれば「欠けさせずに寸法を詰めていく手順」そのものです。
加工方法も鋼とは変わります。切削工具では歯が立たないため、ワイヤーカット放電加工とダイヤモンド砥石による研削が中心になります。当社で対応している材質と加工方法は金型部品加工のページにまとめています。
形状の切り出しはワイヤーカット放電加工で
超硬部品の輪郭は、ワイヤーカット放電加工で切り出します。細いワイヤー電極と加工物の間に放電を起こし、材料を少しずつ溶かして切り進める加工方法で、工具が物理的に当たらないため、超硬のような硬い材料でも形状を切り出せます。当社ではワイヤ放電加工機を5台保有し、複数の部品を同時並行で進める体制をとっています。設備の詳細は設備一覧をご覧ください。
精密部品や薄板部品では、同じ輪郭を複数回なぞって少しずつ寸法を詰めていく「4周加工」で精度を確保します。周回を分ける考え方や対象になる部品の条件は、ワイヤーカットの4周加工とは?薄板・精密部品で精度を出す方法で詳しく解説しています。
プロファイル研削による仕上げ
ワイヤーカットで形状を切り出したあと、要求精度に応じてプロファイル研削で仕上げます。
当社のプロファイル研削機では、CCDカメラで加工部を拡大表示し、形状を確認しながら砥石で仕上げ加工を行います。複雑形状や微細部を高精度に仕上げる際に有効で、金型部品の形状精度や仕上がりを高めるために使用しています。
超硬の研削で調整する3つの条件
超硬の研削で最も注意するのは、やはり欠けです。現場で調整しているのは次の3つの条件です。
| 条件 | 調整の考え方 |
|---|---|
| 砥石回転数 | 砥石と加工面の当たり方を左右する。条件が合わないと局所的な負荷が集中し、角部から欠けが生じる |
| 送り速度 | 速すぎれば1回の当たりが強くなる。特に薄い部分・尖った部分では落とす必要がある |
| 切り込み量 | 1回で削る量を小さく分けるほど負荷は下がる。時間はかかるが欠けのリスクを抑えられる |
この3つは独立していません。切り込みを浅くしても送りが速ければ負荷は下がらず、回転数だけを変えても改善しないことがあります。形状・板厚・材質のグレードを見ながら、組み合わせで決めていきます。
欠けは「削れなかった」ではなく「割れた」状態鋼の加工では、条件が合わなければ面が荒れる・寸法が出ないという形で現れ、やり直しが利きます。超硬の欠けは材料が割れた状態なので、その部品は作り直しになります。条件を攻めることのリスクが、鋼とは根本的に違います。
超硬にはダイヤモンド砥石を使う
超硬合金は一般的な砥石では研削できないため、ダイヤモンド砥石を使用します。加工する形状に応じて砥石の形状・粒度を使い分け、荒取りから仕上げまで段階的に進めます。

当社ではプロファイル研削盤のほか、平面研削盤3台・成形研削盤3台で研削工程に対応しています。プロファイル研削盤の加工範囲は200×110mmで、金型部品として扱うサイズの多くをカバーします。
超硬部品で保証できる精度
超硬の金型部品について、当社が保証できる精度は次のとおりです。
| 項目 | 保証値 |
|---|---|
| 寸法精度 | ±0.003mm |
| 平行度 | ±0.003mm |
この数値は、ワイヤーカットの周回設定と研削条件を形状ごとに詰めたうえで、安定して出せる範囲として提示しているものです。μmで表せば±3μmにあたります。
加工後は3次元測定機と画像測定器で寸法を確認します。加工と測定は一体の工程であり、測れない精度は保証できません。検査体制については品質・生産管理のページで紹介しています。
形状によって難易度は変わります同じ±0.003mmでも、単純な直線形状と、冒頭の写真のような細い櫛歯が連続する形状では、到達までの手間がまったく異なります。図面をご提示いただければ、形状に応じた実現可能性と工程をご回答します。
超硬部品を依頼するときに決めておきたいこと
超硬部品の見積り・製作をご依頼いただく際、次の情報があると検討がスムーズです。
- 形状と板厚:特に薄い部分・細い部分の寸法。薄板が含まれるかどうかで工程が変わります
- 要求精度:全面に高精度が必要なのか、機能上重要な一部分だけなのか
- 用途と使用条件:どの工程で、どのような負荷がかかるのか
- 数量と納期:研削条件は、必要な精度と時間のバランスで決まります
特に効果が大きいのは、要求精度に強弱をつけていただくことです。図面全体に一律で厳しい公差が入っていると、本来必要のない箇所にまで工数がかかります。機能上どこが決め手なのかを共有いただければ、そこに時間を集中させられます。
当社では金型そのものの製作から、部品単位での製作・修理・改造まで対応しています。金型部品の材質選定の考え方は金型パンチ・ダイの材質はどう選ぶ?|使い分けの基準で解説しています。
よくあるご質問
超硬とハイス(HAP40など)はどう使い分けますか?
摩耗が最大の課題になっている工程では超硬が有利です。一方、衝撃がかかる工程では、粘りのある粉末ハイスのほうが安定することがあります。超硬は欠けると作り直しになるため、負荷の性質を見て判断します。材質ごとの使い分けはパンチ・ダイの材質選定の記事で詳しく整理しています。
超硬部品は納期が長くなりますか?
鋼の部品と比べると、周回加工と段階的な研削の分だけ工程が増えます。形状と要求精度によって変わりますので、具体的な図面をもとにご回答します。急ぎの案件については生産計画を調整し、優先対応が可能な場合もあります。
欠けてしまった超硬部品の修理はできますか?
欠けの程度と位置によります。機能面に影響しない範囲であれば再研削で対応できる場合がありますが、刃先など機能部が欠けている場合は作り直しが基本です。現物を確認したうえでご提案します。
超硬以外の高硬度材にも対応していますか?
対応しています。SKD11・SKH51・HAP40といった工具鋼のほか、焼入れ鋼(HRC50〜65)の加工にも対応しています。詳しくは金型部品加工のページをご覧ください。
まとめ
超硬の金型部品加工は、硬い材料をどう削るかという問題であると同時に、脆い材料をどう欠けさせないかという問題でもあります。
- 超硬合金はHRA80〜94の硬さを持つ反面、脆く、加工中の無理が欠けとして現れる
- 形状の切り出しはワイヤーカット放電加工で行い、精密部品・薄板では4周加工で精度を確保する
- プロファイル研削では、砥石回転数・送り速度・切り込み量の3条件を組み合わせで調整する
- 超硬の研削にはダイヤモンド砥石を使い、形状・粒度を段取りに応じて使い分ける
- 保証できる精度は寸法・平行度ともに±0.003mm。加工後は3次元測定機と画像測定器で確認する
- 図面全体を一律の公差にせず、機能上の要点を共有いただくと工数を集中できる
超硬部品の図面をお持ちならご相談ください
高硬度材の金型部品加工に対応しています。「この形状で公差に入るか知りたい」「他社で欠けが出てしまった」といった段階でも構いません。図面をご提示いただければ、加工方法・実現可能な精度・工程をご回答します。
関連コラム