プレス加工に使うアルミのコイル材。工場内で送り装置にセットされた状態

銅からアルミへの材料置換|プレス金型で見直すこと

銅の部品をアルミに置き換えるとき、図面の形を変えずに材料欄だけを書き換えても、同じ金型ではまず打てません。材料が変われば、金型のクリアランスも曲げRも、場合によっては工程の組み方そのものも変わるからです。

この記事では、銅からアルミへの材料置換を検討するときに、プレス金型の側で何を見直すのかを、順送プレス金型メーカーの立場から整理します。当社に実際に寄せられたご相談の内容と、量産に入る前に確認しておきたい点もあわせて紹介します。

プレス加工に使うアルミのコイル材。工場内で送り装置にセットされた状態
順送プレスに使うアルミのコイル材。帯状の板を送りながら、金型の中で抜き・曲げ・絞りを順に加える

銅からアルミへの置き換えが検討される背景

端子やバスバー(電気を流すための板状の導体)など、これまで銅や銅合金で作られてきた部品について、アルミへの置き換えを検討する動きがあります。背景にあるのは、銅の素材価格の上昇です。アルミは銅より軽いことも、置き換えを後押ししています。

ただし、置き換えは「同じ形の部品を安い材料で作る」という単純な話にはなりません。アルミは銅と比べて電気を通しにくいため、同じ電流を流すには断面積を大きくする必要があります。その結果、板厚が増えたり、製品の形そのものが見直されたりします。

現場に寄せられたご相談当社には、銅のバスバーをアルミに変更するにあたり、必要な導電性能を確保するために板厚が約2倍になるケースで、金型で対応できるかというご相談がありました。材料の置き換えは、多くの場合「板厚の変更」とセットで考える必要があります。

銅バスバーの金型でどのような点に注意しているかは、銅バスバーの順送プレス金型事例(反り・穴ピッチ・型傷対策)で紹介しています。

材料を替えるとプレス金型で見直す5つの点

銅からアルミへの変更では、材質の違いと板厚の違いの両方に合わせて、金型を見直す必要があります。見直しの対象になるのは、主に次の5つです。

見直す点 何が変わるのか 見直さないと起きやすいこと
クリアランス パンチとダイのすき間は、材質と板厚に応じて決める 切り口の荒れ、バリ、刃先の早い摩耗
曲げR 板厚が増えると、同じRでも材料の外側の伸びが大きくなる 曲げ外側の割れ、寸法のばらつき
絞り量 材料の伸び方が違うため、1回で絞れる深さが変わる 絞り部の亀裂、しわ
工程構成 1工程でやっていた変形を、複数の工程に分ける必要が出る 局部的な負荷の集中、形状の不安定
金型構造 板厚が増えると、抜きや曲げに必要な力が大きくなる 型部品の強度不足、プレス機の能力不足

このうちクリアランスと曲げRは、材質と板厚を前提に決める値です。銅用の金型の数値をそのままアルミに当てはめることはできません。

板厚が増えると、金型全体の前提が変わる

板厚が約2倍になるような置き換えでは、抜きや曲げに必要な力が大きくなります。パンチやダイなどの型部品の強度だけでなく、金型を取り付けるプレス機の能力が足りるかどうかも確認が必要です。

また、曲げRが同じでも板厚が増えれば、曲げの外側に生じる伸びは大きくなります。銅の板厚で問題なく曲がっていた形状が、アルミの厚い板では割れるおそれがあります。鋭角に曲げる端子の金型で亀裂を抑えた例は、端子の順送プレス金型事例(C2680R t0.5の鋭角曲げ亀裂を抑制)で紹介しています。

工程の分け方と金型構造を見直す

材料に無理な負荷をかけないためには、1つの工程で大きく変形させず、変形を複数の工程に分ける考え方が基本です。順送プレス金型であれば、帯板が送られる途中のどの工程で、どこまで曲げるか・絞るかを配分し直すことになります。

工程を分けると、金型の長さや工程数が変わります。結果として、金型構造の見直しにつながることもあります。順送金型の設計の考え方は、技術・設計のページにまとめています。

銅からアルミへの置き換えを検討中ならご相談ください

「この形状のまま、アルミの板厚でも打てるか」という段階からご相談いただけます。製品図面と、検討中の材質・板厚をお知らせいただければ、金型で見直す点を整理してご回答します。

お問い合わせはこちらお電話: 0256-92-6110

置き換えで起こりやすい不具合と金型での対策

アルミに置き換えたときに起こりやすい不具合は、銅のときとは傾向が異なります。当社が金型の設計・製作で特に気をつけているのは、次の2点です。

細かな粉の発生と、金型への付着

アルミは、加工のときに細かな粉が発生したり、金型に付着したりすることがあります。付着した材料は、製品のキズやバリ、刃先の摩耗の原因になります。そのため、アルミ用の金型では、型部品の表面仕上げを工夫しています。

なお、銅の金型でも、材料が柔らかいことによる型傷には注意が必要です。銅とアルミでは、傷や付着の出方が違うため、型部品との当たり方も材料に合わせて見直します。

材質によって伸びが異なる

アルミとひと口に言っても、材質や調質(熱処理や加工によって整えた硬さの状態)によって伸びが異なります。同じ形状でも、選ぶアルミによって割れやすさが変わるため、金型構造と表面仕上げを材質に合わせて工夫しています。

当社で現在多く加工しているのは、3000番台(マンガンを加えたアルミ合金)のA3003です。1000系やA5052などの5000系も含め、置き換えの候補になっている材質と調質が分かれば、それを前提に金型を検討します。

アルミ薄板で亀裂を抑えた事例は、アルミ薄板(t0.6)の順送プレス事例|亀裂・割れを防ぐ金型設計と、A5052薄板カバーの順送プレス金型事例(ドロー部亀裂・平面度改善)で紹介しています。

量産を見据えて最初に確認しておきたいこと

材料の置き換えは、金型だけでは完結しません。お客様に最初にお伝えしているのは、量産の際、設備として専用ラインが必要になる可能性があるという点です。

これまで銅の部品を流していたラインに、アルミの部品をそのまま流せるとは限りません。金型の設計に入る前に、量産ラインをどうするかを社内で検討しておくと、後戻りを減らせます。

置き換えのご相談をいただくときは、次の情報があると金型側の検討が早く進みます。

  • 現行の銅部品の図面:材質・板厚・形状。現行の金型の工程が分かれば、なお検討しやすい
  • アルミでの候補の材質と板厚:材質名(A3003・A5052など)と調質、導電性能や強度から決まった板厚の候補
  • 使用するプレス設備:板厚が増える場合、能力が足りるかの確認に必要
  • 生産数量と希望納期:試作だけか、量産までか

金型の設計から型部品の製作、トライまでを社内で一貫して行っているため、材料の変更に伴う見直しも、金型全体を見ながら検討できます。型部品の製作体制は金型部品加工のページ、使用している設備は設備紹介ページをご覧ください。

よくあるご質問

銅の端子と同じ形状のまま、アルミに置き換えられますか?

形状によります。同じ板厚で置き換えられる場合でも、クリアランスや曲げRは材質に合わせて見直す必要があります。導電性能を確保するために板厚が増える場合は、曲げの外側の割れや必要な力の増加も検討します。銅合金の端子の金型事例は、C2680R t0.5端子の順送プレス事例や黄銅C2600端子の順送プレス事例で紹介しています。

板厚が厚くなると、どのような点に注意が必要ですか?

抜きや曲げに必要な力が大きくなるため、型部品の強度とプレス機の能力の確認が必要です。また、同じ曲げRでも材料の外側が大きく伸びるため、割れが出ないよう曲げRや工程の分け方を見直します。

アルミの部品は、銅の部品と同じ生産ラインで量産できますか?

量産の際は、設備として専用ラインが必要になる可能性があります。金型の設計に入る前に、量産ラインの計画もあわせてご検討ください。

アルミでは曲げた後の戻り(スプリングバック)も変わりますか?

材質や板厚が変われば、曲げた後の戻り方も変わるため、トライで寸法を確認しながら金型を合わせ込みます。スプリングバックの考え方は順送プレス金型メーカー直伝|スプリングバック対策で解説しています。

図面がまだ固まっていない段階でも相談できますか?

図面がない段階でもご相談いただけます。ただし、正式な金型設計には製品図面またはデータが必要になります。これまでの製作実績は製作実績のページでご覧いただけます。

まとめ

銅からアルミへの置き換えでは、材料だけでなく板厚や形状も変わることが多く、金型はほぼ見直しが必要です。

  • 導電性能を確保するために、板厚が約2倍になるケースもある
  • 金型で見直すのは、クリアランス・曲げR・絞り量・工程構成・金型構造
  • アルミは粉の発生や金型への付着があり、材質によって伸びも異なるため、金型構造と表面仕上げを工夫する
  • 量産では専用ラインが必要になる可能性があるため、早めに検討しておく

アルミのプレス金型は横山製作所にご相談ください

順送プレス金型の設計・製作から、型部品の加工、トライまで一貫して対応しています。銅からアルミへの置き換えのように、材料の変更に伴う金型の見直しも、図面をもとに一緒に検討します。

お問い合わせはこちらお電話: 0256-92-6110

参考文献

  • JIS H 4000「アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条」日本規格協会
  • JIS H 3100「銅及び銅合金の板及び条」日本規格協会